ーー この度はワークスタイル変革カンファレンスでのご講演、誠にありがとうございます。今回はABWを実現するイトーキのXORK Styleについてお話を頂けるということで、いくつかご質問をさせていただければと思います。まずABWに関してお伺いしてもよろしいでしょうか。
ABWとは?

【田中】実を言うと、ABWは弊社が提唱したものではありません。オランダのアムステルダムに本社を置いているVeldhoen社が提唱しているものです。そのVeldhoen社と弊社が提携し、まずは弊社のオフィスをVeldhoen社の提案に基づいて作りました。
ABWを提唱する上で、我々は仕事を10の活動に分けて考えました。分類としては、1人でやる業務、2人でやる業務、3人以上でやる業務、リラックスする…など活動によって10に区切りました。例えば、1人で行う業務としては、他人からは話しかけられず1人集中して行います。対して2人で行う業務ですと、隣で座っている方に気軽に意見を聞いたりします。結果、活動が変わってきます。 我々は、その活動(働き方)によって場所を、1日の中で変えることを提唱しています。「集中して何か資料を作りたい」ときはオフィス内の適切な場所で活動していただいて、終わったらまた違う場所で行いましょうといった形です。フリーアドレスだと、どこに座っても良いのですが、活動がなんであれ、ずっと最初の席に座っています。 しかしABWだと、どこに座って良いというだけではなく、より集中でき生産性を高める状態で働けるようにする、という点ではフリーアドレスとは違うものと考えています。
我々のビジネスは、オフィス空間をはじめ、公共空間、専門空間、そして生活空間まで、人をとりまくさまざまな「空間」「環境」「場」づくりをサポートすることですので、そのサービスの一環としてABWも提供していると考えています。

数ある働き方の中でABWを選んだ理由
ーー ありがとうございます、働き方に関して、シリコンバレーに代表するGoogle社やアメリカYahoo! 社など、様々なスタイルがある中で、ABWを選んだ理由は何かあるのでしょうか?

【田中】そうですね、確かに日本では「生産性向上」というとアメリカが採り上げられることが多いですが、Google社、IBM社などアメリカの会社は現在はフリーアドレスから固定席に戻っています。それは少し私達の目指すところとは異なっているように感じています。
というのも、彼らはコラボレーションを大事にするということが前提にあり、フリーアドレスやテレワークをやめて会社に来るようにする、という方向に向かっているのだと思います。しかしながら、それだと今までの我々と大きく変わりません。
もちろんそれは、コラボレーションを否定する意味ではなく、ABWの場合、働き方をどう考えるか?その上で生産性をどう上げるか?といったスタイルです。それらをどうサポートできるか、それが重要だと考えているので、ABWを推進しています。

XORK Styleとは?
ーー なるほど。それでは、ABWを実現するための「イトーキXORK Style」というのは、どういった位置づけになるのでしょうか?

【田中】 この「XORK Style」というのは、「ABW」ともう1つ、「WELL認証」という考えでできています。WELL認証というのは社会の中で、身体的、精神的、社会的に健康で良い状態の事を指します。ことオフィスにおいてWELL認証は健康を維持するためにオフィスはどうあるべきなのか、という認証制度です。
この認証ですが、食物に対しての制約や、外光の入光量の規定などがあります。最上位の認証を受けようとするならば専用のビルを建てることになります。そういった認証制度のWELL認証とABWを実現するために「XORK Style」を提供させていただいています。またXORKというのはWORKの「W」を「X」に換えて、人とのコミュニケーションを交えてクロスしていただきたい、という気持ちを込めさせていただきました。

ーー つまり「XORK Style」は、個々の従業員の方が自由な裁量でほかの社員の方とコラボレーションできるような働き方を提唱されているんですね。

【田中】 そうですね。それで、なおかつ健康に働いていただきたいと考えています。

ーー 最近、巷でも健康経営はよく話題になっていますよね。

【田中】 はい。健康に関しては、弊社は長い間、提言しており、WELL認証の概念とも合致するという話になりました。そのため以前の弊社オフィスでは認証取得ができないので、今回新たに設計しました。

最も大変だったペーパーレス化
ーー そうなんですね。その固定席から「XORK Style」に変えていくときに、何が1番大変だったかを伺えますか?

【田中】 ペーパーレスですね。固定席ではないので、物を置けるスペースは限られています。しかし、ABWを実践する中で、活動(働き方)によって1日の中で場所を変えることが推奨されます。そうなると、紙があることで、移動の自由が制限されてしまいます。そのため、ABWを進めるためにはペーパーレス化は進める必要がありました。
 そこで新たな問題が生じます。実は弊社はレガシーシステムを使っている部分が意外と多く存在し、内部統制上のリスクコントロールとして、紙を使ってコントロールしている部分があります。そのためどうしても廃止できない書類は存在します。いかに内部統制上の担保を確保するかなど、紙をどの様なあつかいにするかに一番苦心しました。
 そこで我々は紙を5つに分類しました。Aが請求書などの法律上保管しなければいけないもの、Bは内部統制上保管する義務があるもの、Cが提案書、Dがカタログなどに分類しました。そしてまずはC以降を徹底的になくしました。A、Bに関してはやはり難しいのですが、今後1年ほどかけて、基幹系のシステムごと変えていくことにし、例えばAに関してはe-文書法などを積極的に採用し紙を減らしていきます。Bに関しても内部統制上、担保していた証跡なので、新しいERPに入れて、ペーパーレスを目指していきます。

ーー なるほど、分かりました。ご講演の概要内ではイトーキデジタル戦略の一部としてほかに、チャットボットの活用やXORKアプリに触れられています。こちらはどのような活用をされていますか?

【田中】 例えば地域コードのような、営業が見積もりを取るときに必要な情報や、総務や経理もそれぞれ必要な情報があります。これらはやはり探すのに結構大変です。それをチャットボットに問い合わせて自動的に答えさせるものです。チャットボットであれば社内にいなくても聞けますし、瞬時に答えてくれます。
もし答えがなくても、担当者は誰であるのかまでを答えてくれれば不便さを解消できます。例えば経理が別フロアにいるので聞きに行く、または電話で確認するといったことをスマホを介したチャットボットが対応するといったものです。当然PCでも同様のことができます。

ーー XORKアプリというのはどういったものでしょうか。

【田中】 XORKアプリは、どこにその人がいるのかということがわかります。また、オフィス内にQRコードを設けるのですが、アプリでQRコードを読むと電源やHDMI入力の変更、照明の明るさや色などといった操作が可能です。

セキュリティをいかに担保するか?
ーー ありがとうございます。カンファレンスに参加される方達はセキュリティにも関心をよせています。例えばリモートワークにおいてセキュリティーをどのように確保するかといったことなどですが、御社はセキュリティーにどのように取り組んでいらっしゃるのか伺ってもよろしいでしょうか。

【田中】 弊社のセキュリティはシンクライアントをベースにしています。基本的に全てを閉域網上に置いて、外部からのアクセスはシンクライアントのみとすることでセキュリティの担保としています。それ以外では、リスク管理部門と連携して、メールなどの広域型の通常みられるセキュリティ対策をしています。
ただ、個人的にはさらに先に行きたいと考えています。というのは、どうしてもシンクライアントだと利便性が減る部分があります。業務系は問題ないのですが、オフィス系などは仮想サーバーに全部集中してしまい、速度に関して問題が出てきます。ですので部門ごとに使い分けるなど、来年度に整理していこうと考えています。

「XORK Style」の成果
ーー なるほど。今回「XORK Style」に変更されて、働き方(活動)が変わったと思いますが、具体的に残業時間や生産性などの変化はありましたか。

【田中】 そうですね、働き方に関しては大きく変えていこうとしていて、我々は改革というより変革と呼んでいますが、実はその変革は「XORK Style」以前より実践しています。具体的には1人あたり月20時間から10時間への残業時間の削減です。個人的には、柔軟的に対応できるように固定就労時間を変えていくしかないと思っています。

ワークスタイル変革のこれから
ーー ありがとうございます。「XORK Style」導入も含め御社では大きな働き方改革、変革をされているということですが、それにあたりシステム面の変更で、1番ご苦労された部分などはありますでしょうか。

【田中】 「XORK Style」からは離れた話になりますが、弊社では中期計画として2018年から2020年にかけて戦略的なIT投資を行なうことになりました。
その中で、SNS等にみられます人間関係のデジタル化を、ビジネス上でも進めようと考えました。今まで人間が行なっていた顧客接点(顧客にいかにサービスや製品購入してもらうか)の部分もデジタル化して、速さや低コスト、わかりやすさや楽しさを追求していくことを考えました(SoE/モード2)。
かわりに現在デジタル化されている顧客が買った後のデータの処理や、管理の部分の安定性や確実性など(SoR/モード1)のウェイトは減らしていきたいと考えています。つまり、SoR/モード1とSoE/モード2を明確に意識することにしました。
今まで弊社はSoR/モード1のみでSoE/モード2の部分はユーザーにお任せしていました。また、SoR/モード1の部分でいいますと、データを夜間にバッチ処理して、常に保守運用のところに手間がかかっています。今後はSoR/モード1の時間を減らしていき、SoE/モード2に注力していきたいと考えています。

ーー 結構な大仕事ですね。

【田中】 そうですね。現在の処理の仕方ですと、結果を出すのに1日単位になります。そのため、働き方も同様のイメージをしていて、判断がより遅いと感じています。
モード1においてはそれで良いのですが、今後モード2に注力するにあたり、よりスピードを重視します。そこを如何にしてマインドセットとして変えていくかが難しいところです。

いかにして意識を変革させていくか?
ーー マインドセットの変革が大変とよく伺うのですが、現在、マインドセットに関して何か取り組まれていることはありますか。

【田中】 例えば部下に話したのですが、1週間単位でものを考えている中で、翌週打合せがあるとします。すると翌週まで何も考えてないことが多い。そうしてものが決まるのが2週間後、3週間後になってしまいます。そうではなくて、打合せ翌日には一度決めておいて、もし問題があれば都度調整して、最終的にその週に決断できるようにしていこうという話をしました。それは働き方も含めたものです。
また、ベンダーさんに開発していただくとなると、任せっきりになりがちです。そうではなくて業務を理解しているのは自分たちなので、自分たちで責任を負えるようにしていきたいと考えています。

ーー そういったことが、積み重なって残業時間が減っていくということですね。

【田中】 そうですね。半年に1回ほど行なっている1on1でさまざまな話をしながら解決策を模索しています。課長、部長にはもう少し頻繁に行なって欲しいと言っているところです。

参加者の皆様へのメッセージ
ーー それでは最後に、ご講演に参加される皆さまにメッセージをいただければと思います。

【田中】 私はずっとITに関連する業務を行っているのでIT部門の目線でいうと、やはり無駄なことは無くしていきましょう、ということが言えます。
私はいつも「その業務自体って止めたらどう?」と言っています。「削減」というのはあまり好みません。というのも、削減しても元に戻ってしまうことが往々にしてあるからです。だからそもそも止めましょうということを提言しています。止めようとすると真剣に考えなければできません。そうやって考えていくと、仕事のやり方自体も変わっていくのではないか、と思っています。

田中様の講演、実際にお話を聞きたい方は、以下のボタンを押してお申込みいただけます