ーー この度は弊社のフォーラムでのご講演をお受けいただき、誠にありがとうございます。
2月21日にご講演をいただくということで、ご講演に先立ち、改めて貴社の概要と藤岡様(以下、敬称略)の 現在の業務、そしてBOTANISTの開発を担当されていた際のお話をお伺いできればと思います。
まずは貴社がどういった考えで、どういったことに取り組まれているか、お伺いできますでしょうか?

【藤岡】 分かりました。私達は、今期13期目の株式会社I-neというベンチャー企業です。
主に日用品や化粧品、食品、美容家電、雑貨等のファブレスのメーカーとして事業を行っています。

現在は次世代のグローバルマーケティングカンパニーを目指しており、
その為の非常に大きな役割を、デジタルマーケティングが担うことを意識して、
日々マーケティング活動に取り組んでいます。

リソースが豊富な大手のマスマーケティングに対抗するにも、
またグローバル進出を加速させる上でも、デジタルマーケティングは欠かせません。

と言っても、お客様が実際に商品を手に取る場面は、オフラインであることがまだまだ多いので、
Eコマースの未来を描きつつ、オンラインとオフラインの融合も並行して進めているのが現状です。

ーー ありがとうございます。では、そのような取り組みをされている貴社の中で、
藤岡様はどのような業務を担当されていますか?

【藤岡】 私は、マーケティング本部の本部長をしています。

マーケティング本部には、商品開発やブランド管理をしているマーケティング部と、
サプライチェーン全般を管理しているSCM部の2つ組織があり、その両方を管轄しています。

前者のマーケティング部は、主に商品の企画開発やブランドの戦略立案及び運営を行なっており、
一方、後者のSCM部は、購買、供給、物流、品質保証の管理を行なっています。

マーケティング部で特に強化しているのが、トレンド収集、OEMネットワークの構築、開発スピード、
コンセプト及び製品パフォーマンス等の開発テストです。
一方、SCM部では、テストマーケティングでの小ロット生産や、その中でコストを抑えなければならない為、
サプライチェーン全般について強化しています。
サスティナビリティやテクノロジーとの関わりについても、今後注力していきたいと考えています。

BOTANISTの開発の経緯
ーー ありがとうございます。藤岡様がBOTANISTの開発を担当されましたが、どのような経緯で開発されたのでしょうか?

【藤岡】 当社はBOTANIST開発以前、美容家電、化粧品、健康食品のところには参入していたのですが、より大きな市場で戦っていきたい、自分たちの力を試してみたいという強い思いがありました。
ヘアケア市場について調べると、規模が大きいということで、
社長の「藤岡、シャンプーを作ろう」という、鶴の一声から開発がスタートしました。

そして紆余曲折を経て、ボタニカルというコンセプトにたどり着き、今に至ります。
さらに詳しい具体的な開発背景に関しては、フォーラム当日お話しさせていただきます。

ーー 事前にお話し頂ける範囲でお伺いできればと思いますが、冒頭にお話し頂いたように、
貴社はファブレスメーカーとして、様々な商材を扱っていらっしゃったからこそのボタニカルというコンセプトが生まれたのでしょうか?

【藤岡】 いえ、そういうわけではないです。
ヘアケア事業は、当社は初めての参入でしたので、
ヘアケア市場に既に存在している商品について様々な角度から調べました。

多く受け入れられている商品から、ニッチな市場で受け入れられている商品まで幅広いジャンルについて、
最近のトレンドとして、どういった商品が伸びてきていて、
その裏にはどういったニーズやインサイトが働いて、今のトレンドが出来上がっているのかについて、
さらには、売れ続けている商品は、どういうロジックで、何が強みで売れているのか、
その一方で、その商品の弱みはどこか、お客様がどういった点に不安や不満を感じているのか、等々、様々調べた上で、

「こういう商品をデザインすれば、この世に非常に面白い価値を提供できるのではないか」
という発想から生まれたのが、ボタニカルでした。

シャンプーを何個か手がけてきて、次はボタニカルが売れそうだと思いついたのではなく、
今までは健康食品、美容家電、化粧品といった全く違うカテゴリーで、
それらもボタニカルというコンセプトでないものが殆どでした。

ーー それは逆にすごいですね。
新聞記事に、貴社の名前がヘアケア市場に突然現れましたが、
そのような数字を見た時にはどう思われましたか?

【藤岡】 自分の狙ったことがハマったという感想は、正直なところ、あります。
私の部署であるマーケティング部門単体というよりは、
社内全員の力がうまくハマったことが、成功の要因だと思っています。

どれだけモノが良くて、どれだけコンセプトが強くても、
当社でいうところの販売本部の販売力や、
ブランディング本部のブランディングをする力、
そして、デジタルマーケティングの部分がうまく噛み合わないと、
ここまでの売上にならなかったと思います。

そしてやはり、社長の「ここは踏み込むぞ」「ここはちょっとアクセル緩めようか」
という力加減が絶妙で、ファイナンスの部分もうまく噛み合ったというのも要因です。

インフルエンサーマーケティングの下地は創業時代にあった
ーー ボタニカルというコンセプトを考え付いたということですが、
もともと藤岡様はどういったお仕事をされていたのですか?

【藤岡】 実を言うと、私達は学生時代に創業しているので、他の会社にいた経験が無いのです。
創業当時は、社長も学生で、最初は社長が1人でやっていて、そこに3名が加わりました。
起業の話でよくあるような、ボロボロな雑居ビルの一室から始まりました。

ーー 創業当時の話をお聞きしてもよろしいでしょうか?

【藤岡】 もともと弊社は、今のファブレスのメーカーとしてスタートしていなくて、
「このメンバーで、このー度の人生歴史に爪痕を残そう」という思いで始めました。

そんな思いで始めた事業ですが、実際に扱っていたこととしては、
EC、化粧品の卸し、広告代理業、この3つでした。

化粧品に関しては、現在で言うインフルエンサーマーケティングを行い販売していました。
それを
ECでも流通させ、そのインフルエンサーを広告としても販売していました。

ーー とすると、BOTANISTを大きく飛躍させることになったインフルエンサーマーケティングは、それらの下地があったからこそなのでしょうか?

【藤岡】 そうです。ECに関しても、当時楽天市場も存在しないガラケーの時代に、
当社の商品を売っていました。

プロダクトアウトからではない『デザイン思考』から生まれる商品
ーー ご講演のテーマに「前例のない商品づくりのトライ&エラー」とありますが、
具体的にはどのようなトライ&エラーがありましたか?

【藤岡】 こちらに関しても、具体的な内容は講演当日にお話ししますが、
当社の商品開発における基本的な考え方は「デザイン思考」です。
プロダクトアウトではなく、この世の中にどのような価値を提供すれば
より良い社会になるのかをイメージして、それを実現する商品をデザイン(開発)しています。

私達は「Chain of Happiness」という経営理念を掲げているのですが、
これは、弊社のお届けする商品やサービスを通して、お客様、取引先、社員、
そしてそのご家族に幸せが連鎖していくことをイメージしています。

ただ商品を開発するだけでなく、この考えを基本に置き、商品開発に取り組んでいます。

ーー このインタビュー冒頭で、貴社の目標として
「次世代のグローバルマーケティングカンパニー」を目指していると仰っていましたが、
マーケティングカンパニーであるからこそ、色々な商材が扱えるということなのでしょうか?

【藤岡】 おっしゃるとおりです。今お伝えしたとおり、
技術ありきで商品をリリースしようというプロダクトアウトよりは、
この世の中にどういった価値を提供すれば、
もっとより良い社会になるかということから逆算し、それをイメージして商品にしています。
そのように考え、実行できることが、弊社の大きな強み:インハウスクリエイティブだと思っています。
こちらの詳細は講演会当日にお話しさせていただきます。

デジタルプロモーションを意識した商品開発
ーー 「デジタルプロモーションを意識した商品開発」というのは、具体的にはどういったことでしょうか?
若い人にアプローチするために、SNSをいかに活用すれば良いか、というお話でしょうか?

【藤岡】 こちらに関しても、具体的な内容は講演当日にお話しさせていただきます。
1点お伝えできることとしては、弊社はただSNSを活用するというだけではなく、
SNSでよく活用されているワードをAIで収集する独自のシステムを取り入れています。
先日プレスリリースでも出させて頂きました。

ーー それはすごいですね。是非、当日詳しく聞かせてください。
強い信頼関係の上で常に最高のモノづくりを実現
ーー 貴社には「マーケティング部」とは別に、
「ブランディング本部」もありますが、BOTANISTの開発の際には、
社内でどのような議論がありましたか?

【藤岡】 昔は私もブランディングやデザインをやっておりました。
しかし、いつも私が提示するデザインについて、ブランディング本部長が文句を言ってくるので、
ブランディング事業部を作ったらどうですか?と提案しました。(笑)

昔から私とブランディング本部長とは喧々諤々の議論をしていたのですが、
それはお互いに強い信頼関係があるからこそです。
彼が描くデザインを形にしたいという一心で常に私は動きます。
一方で、コストや時間的にこれ以上の実現が難しいと言えば、
藤岡が言うならと彼が折り合いをつけながら、
互いの強い信頼関係の上で常に最高のモノづくりを実現するよう努めています。
幹部全員がデザイン思考から逆算して開発をするので、常に実現における壁が立ちはだかります。
その中で議論も当然生まれますが、それを形にすることが我々の使命だと感じています。

ーー 新商品開発に関して、ボトムアップから始まるかトップダウンから始まるかという議論がよくありますが、
貴社の場合はトップダウンということでしょうか?
社内でどのような議論がありましたか?

【藤岡】 ヘアケアはそうでした。しかし、それは珍しいケースです。
弊社では毎月、社員300人全員から、トレンドやアイデア出しをしてもらっています。
アイデアの質をランク付けしていて表彰もされます。
実際にそこから吸い上げた企画が商品化されていくこともあります。
割合でいうと、むしろそちらのほうが多いです。

変革期のマーケティングについて
ーー 藤岡様は、当日どういったことを参加者とお話ししたいですか?

【藤岡】 大きく3つあります。

1つ目は、デジタルシフトに対しての各社の取り組みについてです。
どういった課題があり、それに対してどういったツールを活用されているかなど、お話ししたいです。

弊社の課題から言うと、弊社は調査についてデジタルシフトができたらと思っています。

例えばコンセプトや製品パフォーマンスの調査についてです。
極端な話、この調査の精度が上がれば、ヒット商品の角度が上がるはずなんです。
しかし、その調査の部分の調査設計やその調査をする対象の人のスクリーニングといった箇所の質を
高めていかないといけないと思っています。
その質を参加者の皆様はどのように高められているのかという点をお聞きしたいです。

2つ目は、これだけ世の中がマスマーケティングからダイレクトマーケティングに変遷している中で、
大手の皆様はどのようにシフトしていこうとお考えなのかをお聞きしたいです。
もちろんマスだから駄目というわけではなく、それぞれの持ち味を活かして、
今後はどのようにマーケティング活動に取り組んでいこうと思われているのか、ぜひお聞きしたいです。

3つ目は、これから先の未来、色々な選択肢-バイオテクノロジー、3Dプリンター、IoT等々-がある中で、弊社はサスティナブルとテクノロジーを念頭に置いて事業に取り組んでいますが、
参加者の皆様はどこに焦点を当てていらっしゃるのかということに興味があります。

最後にメッセージをお願いします
ーー ありがとうございます。
全くゼロから立ち上げた事業の話を聞きたいという方もいらっしゃいますので、
最後に、参加者の皆様へのメッセージをお願いいたします。

【藤岡】 マーケティングに正解はなく、皆様それぞれの使命を持ちながら、
オリジナルの方法でヒット商品の開発をしようとされていると思います。
是非、当日は色々と意見交換をさせていただきながら、
未来のマーケティングについて熱い議論を交わしましょう。
当日、お会いできることを楽しみにしています。