Q. 本日は、お忙しい中ありがとうございます。
今度、10月3日に、ご講演いただく概要をお伺いしてもよろしいでしょうか。

今回の講演は今週の月曜日(編集注:2017年8月7日)に記者発表会をしたのですが、その中身についてがメインとなります。記者発表のタイトルが講演タイトルと同じで、『湖池屋 プライド&イノベーション 高付加価値商品で開くスナックの可能性』でした。その内容をさらに深掘りして、プライドポテトの発売の経緯や背景をお話することを考えています。

まず、今回お話する内容の一つは、スナック市場についてです。食品市場の中に菓子市場があって、さらに菓子市場の中にスナック市場があります。そのスナック市場は、数年前までは価格競争による市場の活性化によって、市場が伸びていましたが、ここ数年は数量の伸びが止まり、市場自体が縮小傾向に向かっています。

その背景として、幾つかの要因があると考えていますが、一つとして市場の売上の大半をしめているのが、ロングセラー商品だということです。当社のポテトチップスも今年55周年なんですが、それ以外のカラムーチョやスコーン、ポリンキー、ドンタコスも、もうすでに全部が20年以上販売しているロングセラーブランドです。よく、次のイノベーションが生まれるのは20年周期という話を聞いたりしますが、スナック市場では、大きくシェアを伸ばしているイノベーション型新商品は20年以上無く、差別化要素が非常に少なくなってきています。その結果として、価格競争による市場活性化という手段しかなく、それも止まってしまったというのが現在の状態ではないかと考えています。

そんな時、他の盛況な市場を見渡した時に、例えば、チョコレートで言えば、板チョコを初めとするチョコレート菓子には、今も人気の高いロングセラー商品が多数ありますが、一方では、高カカオタイプの高単価チョコレートや、乳酸菌入りチョコ、小容量のオフィス需要タイプの包装形態やマルチパックなど様々な新商品が店頭でシェアを取っています。 これは、少子高齢化や所得の二極化、女性の社会進出、食生活の変化や、そもそもの人口構成の変化といった、マーケットの変化に合わせた新カテゴリーやそのサブカテゴリーを生み出す新商品が育っているということであり、またその中で色々な価格帯が生まれています。

チョコレートは、板チョコがものすごく安く売っていたとしても、200円を超える商品もあります。それはアイスクリームについても同じで、100円以下のものから250円を超えるようなものまでありますよね。 一方で、スナック市場を見てみると、ほとんど全部、同じような袋に入っていて、単価も100円以下というように思われています。もっと言うと、実は最近、ポテトチップスのベーシックなものは、安い時に60円台で売り出される状況になってきています。 確かにお客様は買いやすいとは思いますが、価格相応の価値しか感じられなくなってしまい、本当に美味しいもの、贅沢なものという地位はチョコやアイスに取られてしまいます。でもスナックのファンは多い、そう考えるとスナック市場にも高付加価値カテゴリーが求められているのではないかと思いました。

Q. お菓子を選ぶにしても、色々なカテゴリー、特にサブカテゴリーの中で選んでいきますね。

そのようなスナック市場の中で、プレイヤーについて言うと、専業メーカーの中では、当社はシェア2位の立ち位置です。業界2番手として、私達がチャレンジャーとなって、「市場のカテゴリー作りや価格を上げるための努力をしなきゃいけないよね」という想いがあります。それが、講演タイトルの「高付加価値商品で開くスナックの可能性」に込められています。

それに対して「じゃあ、具体的には?」というと、まずはプレミアム商品の開発。というのは、先ほども言ったような「大人でも満足できるアイス」となると、250円くらいのプレミアムアイスや、外食チェーンのアイスがあり、明らかに100円以下で売っているアイスとは味が違います。チョコレート市場も同じですよね。最初は板チョコしか食べたことがなかった人でも、一度美味しいものを食べてしまうと、満足度の基準が変わってしまいます。そのように、他の市場を見ているとスナック市場にも、その波は必ず来るだろうなと思っています。

ポテトチップスは、生のじゃがいもをスライスして油で揚げる、つまり料理と同じなのだから、いい材料を使ってや調理方法にこだわれば、より美味しく感じて頂けるようになるはず。そういうことにこだわっていけばどんどん満足度は上がっていくだろうなと思っています。そこで「まずはプレミアムをつくりたい」ということで作ったのが、湖池屋プライドポテトです。実は日本でポテトチップスの量産化をしたのは当社が初めてで、その時の創業者の想いをこの商品に込めています。

Q. 量産化は当時の社長が主導して、というインタビュー記事を拝見しました。

創業者会長がポテトチップスに飲み屋で出会ったのが、当社がポテトチップス作りを始めたきっかけで、当時は大きい釜を使って手揚げで作っていました。美味しいと評判ですごく売れたそうです。当時は、ポテトチップスは量り売りするようなプレミアム菓子だったそうです。その中で、「こんなに好評なポテトチップスならもっとたくさんの人たちの手元にお届けできれば、もっともっと食べてもらえるはず。」との思いで、量産化に取り組みました。

量産化に向けて、アメリカに行って、設備や製法の勉強をしたそうなんですが、一番難しかったのは、手上げで作っていたときのこだわりを量産化ラインで実現することだったと思います。

当社は、じゃがいもの味がしっかり味わえるポテトチップスにこだわっています。ポテトチップスは、じゃがいもの皮を剥き、スライスした後、水(もしくはお湯)で表面の澱粉等を洗ってから揚げますが、じゃがいもの味をしっかり味わえるようにするには、なるべく厚めにスライスして、水洗いの時間を短くする(なるべく芋の成分を洗い流さないようにする)必要があります。但し、そうすると揚げるのが難しいんです。高温で揚げると焦げてしまうし、低温で揚げるとパリッとした食感がでなくなってしまう。 なるべく厚めにスライスしたじゃがいもをなるべく水洗いせず高温短時間で揚げる。これを実現するために、芋の種類や揚げ温度、揚げ時間、ぎりぎりの厚みなど、かなり悪戦苦闘したと聞いています。

ちなみに素材の味を生かしながらカラッと揚げるのは、天ぷらを参考にしたそうです。天ぷらもしなっと揚がってるとやっぱり美味しくないですよね。天ぷらって、高温で一気に水を飛ばすとカラッと揚がるそうなんですが、その天ぷらに倣って、高温短時間でカラッと揚げるところにもこだわったそうです。

Q. そんなに変わるんですね。

現在は、ポテトチップス専用のじゃがいも品種の開発も進み、年間通して焦げにくいじゃがいもを調達することができていますし、機械の性能も上がって、より効率的作ることができるようになっています。

ただ、その分他社商品との味の違いが出しにくくなってきていました。

なので、プライドポテトに関しては、多少焦げやすくても芋の味が濃い品種を選び、またその中でも状態のよいものを選択して、厚め、高温短時間製法で作っています。そのため、細かい調整のしやすい、比較的の規模の小さいラインで生産しています。

もちろん他のポテトチップスも美味しく作っているという自負はあるんですが、より高い品質の商品をお買い求めいただけるお客さまに対して、芋の厚みや味、パリッとした食感に、よりこだわった製法で作ったというのがこのプライドポテトという商品です。

次にやるのは、プレミアムスナック菓子というカテゴリー自体を知って頂くということです。

品質にこだわった商品を作って、高単価で販売するだけでは、数ある新商品の中に埋もれてしまいます。1つ商品を知ってもらうのではなく、まず「プレミアムポテトチップス」というカテゴリーがあることを知ってもらって、その中の代表商品が「KOIKEYA PRIDE POTATO」であると知ってもらった方が、それを求めるお客様の購買行動とより連動しやすくなります。

そこでやろうと思ったのが、スナック売場にプレミアムコーナーを作ってもらうこと。そのためにはプレミアムスナックブランドが複数必要です。 当社のスナックにはポテトチップス以外もありますので、例えばスコーンという30年以上のロングセラーブランドのプレミアム版を作ろうといって、今年の7月に出したのがスゴーンです。カラムーチョについても、プレミアムにチャレンジしようということを今10月発売に向けて進めている状況です。

Q. 本格的にラインを広げる、用意するという感じになりますね。

当社1社で、プレミアム市場を作っていくのは簡単でないと考えていますが、当社としてはプライドポテトという新商品と、既にあるロングセラーブランドの認知や商品理解を活かしたプレミアム商品を合わせて、少しでもカテゴリーとして認識してもらえる売場を作っていく取り組みが、この秋の目玉です。

Q. このプライドポテトは2月に発売されて、一時期店頭に置けないぐらい販売が好調でヒットされているということなんですが、こちらのプライドポテトも含めて、そのプレミアム戦略が抱えられてる課題や難しい点等ありますでしょうか。

まだまだ根付いてないという点です。言ってしまうとそれだけです。この商品を売る上で、プレミアムスナックって何?ということをお客様が自然に理解できなければカテゴリーにはなりません。まだ「ブランドの認知」「美味しさの理由」「値段の高さの理由」もきちんとは理解されていません。2月に発売して一度テレビCMをしただけですから、話題化はしたものの、私たちの中の調査では、スナックユーザーの中での認知って、現時点だと50%程度なんですよ。さらに商品自体の理解とかというのは、さらに足りないですし、それに加え、小売業や問屋の方々も売り方や、どう扱うべきかというのも分からないのではないかと思っています。

なので、現状に満足せず、より分かりやすく、明確な価値を感じられるように商品の改良を続けていきますし、新商品も発売していきます。また小売業様とも売場作りや最適な販売価格帯について一緒に取組んで行きたいと思っています。もちろんPR活動も地道に継続していきます。

Q. 以前「第3の創業」という趣旨のことをおっしゃってたと思いますが、それは、どなたの主導でやってらっしゃるんですか?

キリンビバレッジ前社長の佐藤章という、商品づくりとマーケティングのプロの新社長を当社に招き、新社長と小池会長の二人が主導的に関わっています。次のリーダーを育てていくというのも行ってはいますが、今はその二人が引っ張ってますね。

もともとの経緯をお話しすると、ポテトチップスに出会って創業したのが第1の創業。第2の創業は、カラムーチョの発売辺りの1980年の前半ぐらいです。第2の創業のきっかけは、実はカルビーさんのポテトチップス参入なんですよ。1975年にカルビーさんがポテトチップス市場に参入した時に、藤谷美和子さんを使って「100円でポテトチップスは買えますが、ポテトチップスで100円は買えません、あしからず」というCMをされていたんですよ。なぜあのようなCMをされたかというと、当社のポテトチップス150円だったんですね。

Q. 今と比べると、高い値段だったんですね。

当社のポテトチップスはあの当時150円だったんです。カルビーさんは同じような内容で100円で出してこられたんですよね。企業規模で言えば、当時からカルビーさんのほうがかっぱえびせん等を出されていて、全国区で大きかったんです。

価格対応するかどうかという議論もあったと聞いていますが、やっぱり品質は維持していかなくてはならないし、価格はそのままで対応策を考えようということになったそうです。「さあ、どうしよう」という時に、「今、市場にない新しいものを出そう!」という考えでカラムーチョやスコーン、ポリンキー、ドンタコスをどんどん出していきました。

これらのブランドを開発するにあたって、採り入れたのが、日本に導入され始めたマーケティング手法の考え方なんですよね。他社がやらないオリジナルのものをやろうという方針に加えて、マーケティングを導入しました。

その時期が第2の創業とするならば、今回はスナック市場に新しい価値(カテゴリー)を生み出す。ある意味で「スナックメーカー」という立場から脱却するという意味で第3の創業となります。それこそが佐藤章が社長になった理由でもありますので。

Q. 最後に、今回ご参加いただく方にメッセージを頂けますでしょうか?

正直に言うと、取り組み自体は、他の食品市場で起きていることをスナック市場にも取り込もうという考え方です。その考え方には共感していただけると思いますし、今の取り組みというのは、市場や消費者の変化という周知の事実に対して、世の中に追いついていくという作業です。その中で、例えばスゴーンなどを御覧頂いてもお分かり頂けると思うんですが、「湖池屋らしさ」という、プラスαのエッセンスを、商品づくりの根本として進めています。
特に何か私たちから学び取ってくださいというような偉そうなことは何もなく、考え方自体はオーソドックスで、ただ、やることはちょっとの湖池屋らしさと、今までに無い創意工夫による驚きをもった企画を展開していきたいと思いますので、そのご紹介をさせていただき、さらに元気になっていく湖池屋を見ていただければ嬉しいかなって思っています。